言葉でも態度でも視線でも、空気すらこのままでこのまま止まってしまえ、と思うのは傲慢だろうか。
初恋は実らない、と良く言ったものだと歓心を通り越して笑えてくる。
これで通算二十五回目の失恋。告白もせずに二十五回も失恋するのは世界広しと言えどそうそう居ないだろう。
 なぜあんな奴なんかに、と罵れば良いのか。
放課後、校庭を遮る見慣れた相方とその横に居る女に嫉妬した。
近寄りがたいその背中が見慣れない男のモノの様に思え、咄嗟に目を逸らした。
固く瞑った目の奥で見慣れた白銀の髪と見慣れない女が笑っている。
 あぁ、これは悪夢なのか。
このまま心臓が止まってしまえばイイと思えるほどの胸の痛みを遮るように抱きしめられた温かな腕に縋り付きたくなった。
優しく子供をあやすように背を撫でる指先が知っている相方のモノではないと教えてくれる。
「あの子は止めておきなさい」
教師然とした口調の中に棘を見つけた。
穏やかな顔が一瞬冷ややかなモノへと変貌する様を知っている。だからこそ余計に感じ取れた。
「それで、もどうしようもないんだ」
 止められるモノならとっくの昔に止めている。
こんな不毛な想いなど、いらなかった。
優しく背を撫でる指先に、抱きしめる温かな腕に、吐き気がした。
 これは彼奴じゃない。
最後に一緒に下校したのは何時だっただろうか。
朧気な記憶の中、鮮明に焼き付いて離れない白銀の髪と見慣れない女の笑顔。