気が付いたときには後の祭りだ。
肝心なときに何一つ出来ないのは昔っから変わらず、何一つ気付けない。
仕方がない、と諦められれば良かったのか。それとも悪足掻きでもしてみせれば良かったのか。
やはり木が付いたときには総てが手遅れだった、と言う話しだ。
見知った橙色が視界を掠めた気がした。
夕方の時間を通り越し、辺りは暗く街のネオンが輝いている時間。
本来なら家族と一緒に過ごす時間帯に家族思いの片割れが出かけるはずもないと言うことを知っている。だから気のせいだと思ったのだ。
見慣れた橙色の髪を持った女と担任の男が一緒に居ることなどあるはずがないのだ。
隣を歩く出会ったばかりの女が腕にしなだれてくるのが鬱陶しく思いながら好きにさせていたら追い掛けて確かめるチャンスを逃がした。
僅かな舌打ちは女の耳には届かず、意気揚々とした女の胸が腕に押し付けられた。
視界の端で見知った男が嗤った様な気がした。