「ひとめぼれだったんですよ」









他愛の無い会話の中で、ふとした折に見せる笑みに目を奪われた、と言うべきだろうか。
裏表の無い笑顔が一瞬、瞬き程度の一瞬で儚くも美しい大人の女性を思わせる、そんな笑みが浮かぶのだ。
 それを何と表現したら言いのだろうか。
心臓を鷲掴みにされた気分だ。
それほどまでの衝撃と、驚きよりも感激が勝っていたのは何故だろうか。
もう一度、と強請るほどの儚い笑みを見たいわけではない。だが、一瞬にして目を奪われ、心臓を鷲掴みにされた気分を不快とは思えないのだ。
 伸びた前髪から覗く、穏やかな眼差しは常に何かを渇望する。
こっちを見て、と咽まで競り上がってきた言葉を必死に飲み込み知らない振りをする。それが良いのか悪いのか分からない。だが、胸の内に渦巻くのは渇望。

 自嘲にも似た笑みが知れずと漏れた。
今更人目を気にする気は毛頭ないが、目の前の少女が驚きに鳶色の瞳を見開いた。
その瞳の中に映る己の姿に歓喜した。




「お前の笑顔、好きかも」








 これだから天然は!!