遠い昔の記憶に、古びた過去がある。
それは何時からそこに住みついて蓄積されたのか定かではないが、それでも忘れられない思い出となり果てていた。
黒塗りの世界で、唯一光があるのなら 笑っていられたのかも知れない。
彼も彼女も。あいつもあの人も。
全てが真っ黒。全てが塗りつぶされた世界。
呼んだ名も。呼ばれた名も思い出せないまま薄れる記憶のなかで彼が呼ぶのだ。
「いっしょに・・・・」
居間にも泣き出しそうな顔で。それでも彼の顔を明確に思い起こせることが出来なかった。
真っ黒な世界に真っ黒な彼が。真っ黒い世界を染める真っ赤な彼。
鼻孔を擽る生臭い匂いは、いつしか嗅ぎ慣れた安堵を与えてくれるモノ。
「ナルト」
忘れたはずの。忘れられない記憶。
脳に蓄積された映像がひとコマずつ再生されては沈黙を生む。