力を求めた。
祈りだけでは何も護れない。だから力を求めた。
奪うのではなく、奪われるのでもなく、護るための力。
その先にあるモノの意味を知らず、求めるがまま力を手に入れ・・・・そして。
この手には一体どれ程の力があるのだろうか。
もう二度と奪われない為に力を求め、護るために力を得た。そして、この手は一体どれ程の人を護れたと言うのだろうか。
 教えてくれ。俺は、俺はどうすれば良かったんだ?
フラウ、と象る唇は震えていた。握り締めた手はきつく握り締められ、色褪せていく。
震えを誤魔化すように噛み締めた唇から血の味がする。
フラウ、ともう一度声なき声で呼ぶ。
常に傍にいた温かな存在が何処にも居ない。
ずっと傍にいる、と誓ってくれた約束。笑い合った温かな世界。
総ては夢だったのだろうかと思うほど温かく、掛け替えのないモノ。
気が付いたときには掌から零れ落ちていたとしても、フラウは確かに傍に居たのだと実感できた。
だから失念していた。
ゴーストセブンとしての役目は絶対である。
決して許されない想いを抱いたのだ。それが錯覚であればどれ程良かったか。
今では総てが手遅れ。
俺もフラウも総てを投げ捨てられれば良かったのだ。そうすれば誰も苦しませずにいられたのだろう。
それが出来ないからこそフラウは苦しみ、罪悪感を背負い続けた。俺の知らないところで何時も総てを背負おうとするフラウが確かに好きだと想えた。
ミカッゲとは違う。ハクレンともカストロさんともラブラドールさんとも他の皆とも違う、特別なモノ。
その名前を教えてくれたのはフラウだったから受け入れられた。こんな俺でも許されるんだと、そう思えたんだ。
 誰も予測し得て、しなかった。
最悪な結果なんていらないから、だから俺はずっと目を反らし続けた。
でも、フラウはちゃんと分かっていたんだ。ずっと目を逸らし続けてきた最悪の結果と言うヤツをフラウは覚悟していた。
それがいけない事じゃない。予測できる事なら尚更。


 ごめんなさい。
許されない想いを抱いた。
 ごめんなさい。
神に背く行為だとしても止められなかった。
 ごめんなさい。
総てを許せるほど大人じゃなく、総てを受け入れられるほど子供じゃない。
 ごめんなさい。
世界の終わりを望んだ。





 さぁ、始めようか。
誰かが耳元で囁いた。
これで良かったんだと、そう思えるほどナニカを望んだわけでもなく。
色褪せた世界は確かに目の前にあるはずなのに、遠くに感じるんだ。
 フラウが傍にいないから?違う。俺は願ったんだ。フラウと居られる世界を。
遠くで声が聞こえる。それは叫び声なのか悲鳴なのか分からない。
でも何処か懐かしく胸を温かにする声。でもフラウの声ぎゃない。
 おいで、と誰かが耳元で囁く。
それに逆らう術を知らず、促されるままにふるった力は何の為のモノだったのか今では何も分からない。
ただ分かるのは、この声には逆らえないと言うこと。
 フラウ。フラウ。フラウ。お願いだ。俺を殺してくれ!!
誰かが高らかに勝利の笑みを刻んだ。