結局行き着く処はひとつなのだと思い知らされた。
言葉よりも雄弁に語る瞳がジッと見つめてくる。居心地の悪さに視線が泳ぐのは仕方がないだろう。
地球を見下ろす瞳は何処までも優しく、見つめてくる瞳は同一人物なのかと疑いたくなるほど鋭さをもっていた。
大宇宙から見下ろす地球に抱かれ、母なる大地が愛しくて仕方がない。それは横に佇む麗人もまた同じだろうと言うことは特徴的な紅い瞳を見ればわかる。だからと言ってこの能面にも等しい無表情な麗人は簡単には胸の内を明かしてはくれない。
それが無性に寂しい。
大宇宙を漂い続けた時間は優しさも辛さも教えてくれたが、そこには安息はなかった。日に日に擦り切れていく精神を支えたのは生まれる前から機械によって刷り込まれた帰還本能。
皮肉だ。
SD体制は大宇宙を漂う中で更に完璧なものを求めて進む。そこに人類が入り込む隙はあるのか甚だ疑問だが、人間は考える事を機械に任せた。自業自得とは言え、機械によって全てを管理管轄された人間に変革を促すのは無茶にも等しいだろう。
それをやってのけるようとする隣の麗人に数多の尊敬が向けられている。
シャングリラが出航してどれ程の時間が流れたのだろうか。ほんの数人の同士達から始まり、徐々に人数が増えたがその分だけ減っていった。
今ではシャングリラ出航当時を知る者は数人しかいなくなった。
それが寂しくないとは言えないが、時が癒してくれる。人間よりも身体的には劣るが基本的にミュウは長寿だ。
後悔も懺悔も悔やむ時間はあった。それが唯一の救いだろうか。
人間から迫害された時間は生々しく脳裏に焼き付いている。だからこそ求めた安息の地・・・地球。
シャングリラの総指揮者・ソルジャー・ブルーと進む道はまだ先が見えない。
それでも還りたいと思うのは何故だろうか。
機械に植え付けられた地球は余りにも遠く、心は常に求めて止まない。
泣きたくなる程切実な思い。
胸に抱いた根拠の無い希望。それでも前へと進む事を止めないソルジャー・ブルーが切なかった。
刹那的な生き方。
悲しくて、寂しくて。
それでも立ち止まる事を良しとしない背中が遠い。
幾度の戦闘を繰り返し、地球を求めても辿り着く先が見えなく、諦める事は出来なかった。
機械によって管理された社会からは異端でしかないミュウと言う存在を肯定してくれる母なる大地。
夢を見る。
幾度の巡ろうとただひとつ、地球を求めても止まないミュウの祝福はまだ遠い。