卒業式。そんな大層なものでもなく、軍人としての新たな旅立ちの日。
ずらりと並んだ卒業生と軍上層部のお偉方。長々と続く有り難くも鬱陶しい言葉に欠伸を噛み締めては眠気を振り払うのに一苦労だった。
「ねぇ、一護」
「っうぁ?」
そんな間抜けな声と共に沸き上がった欠伸。目の端に浮かんだ涙を拭きながら隣で恭しく話しを聞く振りをする親友。
「一護」
咎める声と同時に幾つかの視線が身体に突き刺さる。そろりと視線で見渡せば、教員が顔を顰めているのが分かる。いくら主席卒業といえども、開設以来の問題児が主席など甚だしいというのが眼に取れる。それをシニカルに嘲笑う。隣で水色が苦笑するのが分かった。
「まったく」
そんな言葉と共に水色の笑みはいつも困ってはいない。むしろ愉しんでいると言っても良いほど。
咲き誇る桜が風に揺られ、花弁を散らす。
まるでそれが幻想的であり、儚くもあった。そんな事を思う自分は既にこの場に止まって羽織らず、夢うららと彷徨う思考と子守歌のような長い話しで途切れ途切れになっている。
何処か遠くの空の下、こんな有り触れた日常とはかけ離れた争いが続いている。
まだ見ぬ誰かが笑っている。
最期に思うのは