さてさて、我が主はそれはもう人目を引く容姿を持っておりまして、ある意味では男女共に好意をよせられておいでなのです。
まぁ、我が主はそんな好意など滅多なことではお気づきにはなられませんので、試行錯誤を繰り広げる人間どもは滑稽で面白おかしくもあるのです。
まさに笑いが止まらない、とはこの事でございましょう。
我が主に不埒にも手を出そうなどと身の程知らずな人間どもに同情などするよちもあるわけもなく、ですが我が主は変わり者でございますれば、俗世から離れた変わり者がわんさか群がるので近頃は困ったものなのです。
あぁ、我が清らかな主に万が一にでも手を出す者がいるとは思いませんが、念には念を、とでも言いますでしょう。
幾分厳重に敷かれた我が主の場へと足を踏み入れる者はいらっしゃらないでしょう。私としてはそれに越したことはないのですが、やはり念には念をと思いまして私めが主をお守りさせていただこうと思うのです。
あぁ、我が主が何処か楽しげに時を眺めておいでらっしゃる。
これは前兆なのでしょうか。
我が主は時を巡るのがお好きでして、何度ご注意してもおやめにはならないので困ったものなのです。
いつもは眺めているだけに止まっている我が主が時へと介入なさるではありませんか。
我が主は時の管理者でございます。
人間共に時を提供なさっておいでなのです。
古びた時計の針が時を刻む様に、我が主は人間どもの時を眺めるのがお好きなのです。
それはよいのですが、我が主の悪い癖がまた出てしまったようです。
我が主の興味をそそる時とは、何でございましょうか。
時へと足をお運ばれる我が主は愛用のシルクハットとステッキ片手に、時への門をお開けになられました。
暗く、それは本来なら介入は御法度だと言うのに、我が主の周りにいらっしゃる方々はそれはもう、我が主には甘いお方ばかり。我が主を窘めることはあっても、決して我が主をお止めになられることは一向にありません。ですからこうして我が主を守るため、共に時間への旅へと赴くのでございます。
あぁ、我が主が鼻歌を口ずさんでおられます。
此度の時は、いかがなものでしょうか。