「時は金なり、と言いますでしょ?」
「貴方の時間、私が頂きます」





 この世には、世にも不思議なモノがありまして。
それを管理、監督するの者がおりました。
世の闇と夜の闇を行ったり来たり。
闇と闇を渉る我が主は往来の狭間にひっそりと、それはもう愛おしい時間に囲まれ暮らしておいでなのです。

 おや?
誰かがこちらへ近付いて来ておいでです。
 ふらり、ふらり。
宵の口にはまだ早すぎるのではないのでしょうか。
久方ぶりに見る夕闇に染まる空を背に、これまた変わった者が迷い込んだようです。
 ふらり、ふらり。
それは蝶の様な軽やかな足取りとは言い難くも、何処か俗世から一歩外れた人間の様ではないのでしょうか。

 よもや、と思いましょうか。
 やはり、と思いましょうか。
我が主は、それはもう世俗から離れた変わり種。
我が主の元へと辿り着くのは、やはり何処か主と似通った変わり種が多種多様。
またもや、我が主は俗世に従ずる者を引き寄せておしまいになったのでしょうか?

 あぁ。
我が主が、それはもう楽しそうに鼻歌をお歌いになっているではありませんか。

 ふらり、ふらり。
一歩、また一歩。
あるべき時間から外れ、古びた洋館の扉を潜るのです。


「いらっしゃいませ。時の管理者・時間屋へ」